contents
background
未来を醸すインキュベーション施設
醸造家の育成支援をはじめ、多様な酒の造り手と飲み手を創出するためのプラットフォーム「はじまりの学校」の事業立ち上げにあたり、事業者である「株式会社 酒と学校」のブランド戦略策定を支援し、施設のネーミングやVIをはじめとするコミュニケーション全体のクリエイティブディレクションを担当しました。
「はじまりの学校」は岩手県紫波町にある廃校を利用した施設で、将来的には醸造・宿泊体験の設備を備えた複合施設に改修することを計画しています。町は南部杜氏発祥の地として知られ、100年以上続く日本酒の酒蔵が4つあるほか、ワイナリーやサイダリーもあり、原料となるブドウやリンゴの栽培も盛んです。そのような地域の特徴を活かした町づくりが進められる中、「はじまりの学校」は”酒のまち紫波”を象徴する施設として誕生しました。
strategy
多様なステークホルダーを束ねる旗印
酒を起点にした取り組み事例は他の地域にも数多くある中で、「はじまりの学校」の独自性はどこにあるのか。ブランド戦略を策定する中で着目したのは、町全体をひとつの醸造場として捉え、酒産業・造り手・飲み手の好循環を生む共創サイクルでした。
縮小する国内市場や、新規参入の障壁になっている法規制など構造的な課題を抱える酒産業。産業振興や人材不足といった行政課題に取り組む紫波町。「はじまりの学校」は事業を通じて多様な造り手と飲み手を創出し、地域とマッチングすることで、酒産業と町の双方の活性化を図るとともに、その好循環を事業の成長に取り込む共創サイクルの構築をビジョンに描いています。
この利他的な事業モデルは、南部杜氏のパブリックマインドに通じる紫波町らしいユニークな形と言えます。一方で、酒という共通項はありながらも視座の異なる多様なステークホルダーとの共創関係を構築することは簡単ではありません。実現にはステークホルダーの視座を束ねる旗印が重要だと考え、事業コンセプトを表す施設名のネーミングに着手しました。
execution
「はじまり」の言語化・視覚化
施設名
造り手のチャレンジや、飲みの新たな酒の魅力との出会いなど、様々な「はじまり」を創造する施設の存在意義を素直に表したネーミングです。南部杜氏発祥の地であることや、学校で使用する仕込み水の水源など、地域固有の「はじまり」のアイデンティティも込められています。
VI
清酒、ワイン、クラフトビール、その他醸造酒、はじまりの学校で醸造を予定している酒類の酒器をモチーフにしたグラフィックで構成されたVIです。パターン化されたアイコンは個別に使用したり、色味をバリエーション展開したりと、事業の広がりに応える拡張性も施されています。
商品ラベル
はじまりの学校ブランドとして、町内の酒造業者や外部の醸造家らとの酒づくりに挑戦するPB商品のラベルデザイン。第一弾は清酒とハードサイダーです。ブランドの顔として”らしさ”を主張しつつ、コンセプトが表に立ちすぎないようバランスを図り、お酒のおいしさと味わいを丁寧に扱っています。
PR戦略
将来的な醸造施設の設立に向けて、事業立ち上げフェーズの”はじまり”を可視化し、多様な造り手や飲み手を醸成する足掛かりとなるタッチポイントを整備しました。Instagram、note、LINEの3つのメディアを設けて、取り組みへの興味関心の熱量に合わせた関わり方をデザインしています。
result
「はじまりは廃校になった小学校だった」
100年後、町内に100の醸造関連事業者が誕生し、世界から「SAKE TOWN 」として認知される未来像に向けた挑戦は、はじまったばかりです。
今後はPB商品の販売を皮切りに校舎の改修を段階的に進め、造り手と飲み手を呼び込む醸造施設と宿泊・体験施設を整備していく計画です。todayでは引き続きハード、ソフト両面のコミュニケーション設計を支援し、新たな酒文化の醸成に取り組んでいきます。
credit
client: 株式会社酒と学校
category: ローカルブランディング
work scope: 事業戦略設計, クリエイティブディレクション, ネーミング