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自然と職人技が生み出す天然醸造味噌
標高1,000m、アルプスの山々に囲まれた長野県北安曇にあるマルコメ美麻高原蔵。ここでは冷涼な気候を活かした「寒仕込み」による天然醸造味噌が作られ、限定商品として販売されてきました。寒仕込みとは、温度が低い環境でじっくり時間をかけて熟成させる技法で、長期熟成させることで味噌の奥深い味わいと旨味をより一層引き出すことができます。この味噌の価値をさらに高めようと、木樽に仕込む昔ながらの製法による「美麻高原蔵 本格天然醸造味噌」の商品化プロジェクトがスタート。商品のブランド価値を発信するコミュニケーション設計と、コンセプトムービーが求められていました。
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異色プロジェクトに込められたメッセージ
なぜこの時代に味噌メーカー最大手のマルコメが、あえて時間も手間もかかる味噌づくりに取り組むのか?その答えはマルコメの企業姿勢にあるのではないかという見立てのもと、コンセプトの検証に入りました。「美麻高原蔵 本格天然醸造味噌」は、発酵食を通じて信州のおいしさを伝え、人々の健やかさに貢献していきたいと考えるマルコメの想いを象徴する商品です。木樽に仕込む伝統的な製法、美麻高原蔵の環境を活かした寒仕込みが表すのは、自然を慈しむ日本人の心と、発酵の可能性を未来へと伝承していこうとする味噌メーカーとしてのマルコメ想いに他なりません。この想いこそがムービーを通して伝えるべきテーマの核心だと考えました。 また、この商品は美麻高原蔵の施設としてのブランド価値を高めることへも繋がると考え、ランディングページ上の情報設計も視野に入れて取材を進めました。
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託されたバトン
まず取材に向かったのは長野県の最南端にある根羽村。矢作川の源流にあたるこの地域には、根羽杉と呼ばれる美しい杉の山林が広がっています。林業組合の職人に同行し、木樽の材料になる樹齢60年以上の杉を伐採する様子をカメラに収めました。「正しく木を切ることは森を生かすこと」。100年、200年先を見据えて森を育てる根羽村の人々の生き方は、マルコメのビジョンとも重なるものでした。続いて訪れたのは、100年以上の歴史を持つ木樽工房。組み板に僅かでも隙間が空くと液漏れしてしまうため、寸分のズレも許されません。代々受け継がれてきた匠の技が、美しい円を描く木樽を完成させます。そしてバトンはマルコメへ託されました。大豆、米糀、塩、厳選した素材を使い、熟練職人の手によって木樽に仕込まれた味噌は、美麻高原蔵の自然のゆりかごで永い眠りにつくのでした。
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モノづくり、場づくり
現在、美麻高原蔵は体験型の観光施設としてオープン。味噌の製造方法を学ぶパネルや木樽を展示するエリア、熟成味噌を量り売りする物販コーナーがある他、味噌の手づくり教室や食べ比べ教室といった体験型プログラムが実施され、子供から大人まで多くの観光客が訪れています。また外国人観光客のための多言語表示や案内スタッフの充実が図られ、インバウンドに向けた取り組みとしても注目を集めています。「美麻高原蔵 本格天然醸造味噌」はマルコメのフィロソフィーにお客様がふれる機会を生み出し、発酵の可能性を未来へ伝承することに貢献しました。
credit
client: マルコメ株式会社
category: ブランディング, インバウンド, ローカル,ツーリズム
work scope: クリエイティブディレクション, コンセプトメイク, プランニング